不眠症とは
不眠症は「眠る時間や機会が十分にあるにもかかわらず、入眠、睡眠の持続、睡眠の質と量の問題が繰り返し起こり、その結果、日中何らかの障害がもたらされること」と定義されています。またこの時、多くは寝られないことへの苦痛や不安を伴います。
不眠症の分類(睡眠障害国際分類 第2版〔ICSD-2〕2005をもとに作成)
Ⅰ.不眠症
1.適応障害性不眠症(急性不眠症)
2.精神生理性不眠症
3.逆説性不眠症
4.特発性不眠症
5.精神疾患による不眠症
6.不適切な睡眠衛生
7.小児期の行動不眠症
8.薬剤もしくは物質による不眠症
9.身体疾患による不眠症
10.物質あるいは既知の生理的条件によらない、特定不能の不眠症
(非器質性不眠症、非器質性睡眠障害)
11.特定不能の生理的(器質的)不眠症
これらのうち、ストレスの明確な要因によって不眠が起こり、その要因がなくなると治る「1.適応不眠症(急性不眠症)」、最初はストレスなどの明確な要因があって不眠が起こるが、そのうち眠れないことそのものが要因のなり、最初の要因がなくなっても1ヶ月以上不眠が続く「2.精神生理性不眠症」、脳波など客観的には不眠の証拠がみられないのに本人だけが深刻な不眠を訴える「3.逆説性不眠症」、明確な要因はなく子供の頃から現在まで長期にわったって、不眠が持続している「4.特発性不眠症」、就寝時間が不規則なことや寝室が暑いなど「6.不適切な睡眠衛生」が原因で起こる不眠症、養育者のしつけが不適切なために寝るのをぐずったり、身体を揺すり動かす・車に乗せるなど寝入るための条件がないとなかなか寝なかったりする「7.小児期の行動的不眠症」があります。これらは原因となる疾患がなく不眠が起こるので、原発性不眠症と呼ばれます。
これに対して、うつ・パニック障害・統合失調症などで見られる「5.精神疾患による不眠症」、アルコール・カフェイン・薬などを不適切に飲んだことで起こる「8.薬剤もしくは物質による不眠症」、痛み・痒み・呼吸障害・神経疾患・内分泌疾患などで見られる「9.身体疾患による不眠症」は、何らかの原因疾患があって不眠が起こるので二次性不眠症と呼ばれます。
3⃣不眠症の原因
▶身体的要因
痛み、痒み、頻尿、下痢、呼吸障害、過活動など。
▶生理的要因
時差、交代制勤務、短期入院、睡眠環境(騒音・光・温度)など。
▶心理的要因
ストレス、重篤な病気、人生上の変化(引越し・転職・失業・離婚・伴侶の死)など。
▶精神的要因
不安、うつ、パニック障害、統合失調症、アルコール依存症など。
▶薬剤・物質
アルコール、カフェイン、ニコチン、自律神経調節薬、中枢神経抑制(刺激)薬など。
このように、不眠症は様々な要因によって引き起こされます。ですが、これらの要因によって不眠症になる人がいる一方で、同じ条件・状況下でも全く気にせずよく眠れる人がいます。このことから、上記の要因は睡眠にとっての「不利な条件」程度でしかないと言えるでしょう。では、なぜ人によってそのような違いが出てくるのでしょうか。
その要因には性格的な違いが考えられます。一過性のストレスや環境変化によって、一時的な不眠になることは多くの人が経験するものです。普通はその原因がなくなると不眠は解決されるのですが、神経質で完全主義傾向の強い性格の人では、不眠そのものを強く意識して悩み、持続的な不眠症に陥ってしまうことがあります。このように、不眠を訴えてくる患者の多くは「性格」が原因だと言われています。
4⃣不眠症の症状
⑴入眠障害
寝つきの悪るさを訴えるものを言います。いったん寝ついてしまえば朝まで寝れます。また、若年者でも訴えることの多い不眠のタイプです。
この不眠は多くの場合、心身緊張や興奮が原因で起こります。
⑵途中覚醒
寝付きには問題ありませんが、夜中に何度も目を覚ます物を言います。入眠後2~3時間で目を覚ますことが多いようです。このタイプの不眠は中高年に多く見られます。
また、心理的要因や心身的要因で起こることもあります。
⑶早朝覚醒(早期覚醒)
すぐ入眠し途中で目覚めることなく継続して眠れるのですが、早期に目を覚まし、その後眠りに戻れないものをいいます。このタイプは不眠の高齢者に多く見られます。不安や緊張、興奮が強い場合や、うつでも多く見られます。
⑷熟眠障害
時間的には十分であっても、眠りが浅かったり中途覚醒があるため休養が不十分になり、深く眠った爽快感が得られないものを言います。睡眠時無呼吸症候群など、特殊な疾患が潜んでいることもあります。
また、長期間服用していた睡眠薬や、同じく長期間続けている大量飲酒を急に中止した時にも、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりするため、熟眠障害を訴えます。